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小鳥(ことり)

Author:小鳥(ことり)
指差し指されの人生も、独りじゃ出来ない人の興。良も不良も時々に、白でも黒でも無いと知る。「人ではじまり、人に終わる」 ただそれだけの事。

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  • 25-8 不可能について

「 "リー(小鳥)"ちゃんはまだ若いから・・」

お決まりの台詞が飛び出る場面は、金の話、性の話、感覚の話と色々であったにも関わらず、"小鳥"のリアクションは一辺倒なもので、

「 年は関係ねぇよ・・」

長く生きている実績を認める感覚は乏しく、ムキになってその講釈を遮る反射は乱暴で、平静の場面の"葵"に言わせれば、

「 目つきが変わる・・」

との事だった。

11年先を生きる"葵"からすれば、まだまだ先も周りも見えていない幼子に見える事もあったに違い無い。言い方を変えれば"葵"が11歳の時、"小鳥"はまだ精子だった訳である。

しかしそんな"小鳥"も、ただ自分勝手に生きていた訳では無く、そこにはこんな理由があった。

それはパチンコ屋で働き始め、二人で楽しく夜を過ごすばかりだった頃、

「 "シン( "小鳥"も顔を知る前の前の彼氏 )"ちゃんのアパートに置いたままの私物を取りに行きたいんだけど・・」

という"葵"の申し出を快諾していた"小鳥"は、

「 "リー(小鳥)"ちゃん、荷物を整理してたらアルバムが出て来たからそこの棚を使わせてもらったよぉ~ 」

「 おぉ、いいよいいよ 」

"葵"の大切な思い出なのだと理解すれば、二人の住処に置く事にも抵抗を示さなかった。

「 ねぇねぇ、昔のアタシ・・ 見たい?」

( むむっ? ム ・ カ ・ シ ・ ノ ・ ア ・ タ ・ シ?)

「 うんうん 」

若かりし頃の"葵"のアルバムは数冊に及び、一冊目の1ページは、

「 山梨の高校を中退して町田の親戚宅に預けられて・・ 編入したけど結局辞めちゃって・・ 暴走族に入ってからは・・ 」

馴れ初めの頃に"葵"が語った事のある町田時代の思い出話を真実と裏付けていた。

「 おぉ、これがあのラズベリー時代?」

「 そうそう、ラズベリーの支部が増えすぎちゃって、ラズベリーがラズベリーを食い潰す抗争時代でさぁ、アタシのアパートも襲撃されて大変だっただよぉ・・」

「「 ぎゃははは・・ 」」

「 竹やり持って襲って来てさぁ、けっこうパクられて、新聞にも載ってさぁ・・」

「「 ぎゃははは・・ 」」

「 これは誰?」

"葵"の横に密着して写っている男を指差すと、

「 この時付き合ってた彼氏っ 」

「 へっ!へぇ~ 」

そしてページは捲られて行き、いよいよ大人の女性になった"葵"が登場すると、スパンコールが輝くワンピースと背景は、それが水商売である事を嫌でも伝え、

( もしかして・・ )

"小鳥"はこの時、うっすらと嫌な予感を覚えたが、キャピキャピと昔を振り返ってご機嫌な"葵"を止める気にはなれなかった。

「「 ぎゃははは・・ 」」

そして次のページには、

( ? )

ソファに座る男の膝の上で後ろから腕を回されて抱えられている"葵"が写っていて、

「 これは誰?」

「 それはアタシ・・ 」

「 いや、ほうでなくて、後ろの男・・」

「 あぁ、これはこの時付き合ってた彼氏・・」

「 へっ!へへぇ~ 格好良いじゃん・・」

「 でしょぉ!」

それからもページは進み、

「 これは芸者仲間と・・」

「 石和のスナックで・・」

「 10年付き合った彼氏・・」

「 これは"シン( "小鳥"も顔を知る前の前の彼氏 )"ちゃん・・」

11年先を生きる"葵"の過去は分厚く、けれどその過去達は捲るページの順番通りでも無く、

( どの辺りで10年付き合ったのだろうか?)

( 山梨に居て・・ 町田に行って・・ 帰って来たとして・・ じゃぁ彼とはどこで・・ )

"葵"にしてみれば整然と理解していたとしても、初見の"小鳥"にはてんでまとまる余地など無く、まるでいっぺんに捲り出された過去をすんなりと受け入れるのは不可能だったが、もしかするとこの時まで、"小鳥"には嫉妬も束縛も抜きん出たものなど無かったのかもしれない。

愛する女の過去に、別の男がいたとしてもそれは当然で、仕方が無い事を解らぬ"小鳥"でも無かったはずである。

ならば何故?

実はこの後、衝撃的な出来事が起こっていたのである。

それは、最後になった思い出のアルバムの何ページ辺りだったろうか、

「 これはカカシ(商運)に行きながら夜はスナックで働いてた頃だと思うけど・・」

" パラッ・・パラパラ・・ "

( ドキッ!)

一瞬、いや数分、時が止まってしまった様だった。

真っ白なグランドピアノを弾く白いバスローブ姿の中年男の写真を見た"小鳥"は、それを撮影しているのが"葵"だと察知した。するとやはり二枚目の写真には顔を近付けた二人がアップで写っていて、そこに映る"葵"の表情は、これまでの"小鳥"が見た事の無いものだった。

( こんな表情をする事があるのか・・ )

そして三枚目の写真には、バスローブ姿の"葵"が一人で佇んでいて、

( ラブホテル・・ )

そう思うには十分だった。

これがもし、それだけの事であったのなら、

「 これは誰?」

と聞いた後で、

「 あぁ、これはこの時付き合ってた彼氏・・」

とでもなって、

「 へ、へへへぇ~ 」

でかろうじて済まされたのかもしれなかった。

しかし、そこに写る男こそ、

「 ウ、"ウズラ"・・」

石和で水商売をしていた頃に出くわし、

( かっけぇ・・ )

と遠いお空の様に見上げた男が、"葵"の過去に思いも寄らぬ形で残されていたのである。

「 ぐぅ・・ ぐぐ・・ ああ・・ ああああ~~~ 」

感情を言葉で表す事も隠す事も出来ずに唸り散らした夜は涙など出なかった。

( 仕方の無い事さ・・ 仕方の無い事さ・・ 仕方の無い事さ・・ )

唱えても唱えても、何度唱えたって沈静化などは出来ず、

「 何なんだよ! テメェは"ウズラ"と付き合ってたのかぁ~ 」

「 えっ、前に言ったじゃん・・」

「 うるせぇ~ 」

確かに、その男のベルトをご機嫌で使っていたし、とっくに知っていたはずなのにもかかわらず、ただただ取り乱した。

「 昔のアルバムをここに置くんじゃねぇよ 」

「 "リー(小鳥)"ちゃんが自分で良いって言ったんじゃん!」

「 うるせえ!てめえはアバズレだろ!」

「・・・」

「 何とか言えや!」

「 "リー(小鳥)"ちゃんがそう思うなら、そうなんじゃない?」

「・・・」

他人が自分の人生を知った気に語る事を嫌っておきながら、"葵"の人生を勝手知った気に決め込んでいたが故の跳ね返りに打ちのめされた"小鳥"は、最終的には今にどれ程の努力をしても、どうにもならない事があるのだと受け入れざるを得なかった。

この現実はどうにもならないだけに、敢えて意識を向けないようにして来たのだが、"居酒屋イカおやじ"での一件を契機に、まるで封印が解かれた様に再び馬鹿でかく浮上してしまうと、

( 俺が年上だったら・・ )

( もっと早くに産まれていれば・・ )

会話の減った二人の空間で"葵"と繋がりを持つ年上の男達に沸々と対抗心を抱いては、追い抜く事の出来ない歳の差に苛まれていたのである。

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