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小鳥(ことり)

Author:小鳥(ことり)
指差し指されの人生も、独りじゃ出来ない人の興。良も不良も時々に、白でも黒でも無いと知る。「人ではじまり、人に終わる」 ただそれだけの事。

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  • 29-8 通い夫

検査入院をした"葵"は、外出を認められない病院という建物で、おおよそ今までの日常とは違う暮らしを送る事となった。

" トントンッ "

仕事を終えた後の"小鳥"が病室を訪れると、入院着姿でベットに横たわっていて、

「 おかえり・・」

そこに覇気は無かった。

「 ただいまぁ! 具合はどうで?」

無理に明るく振舞う"小鳥"に、

「 レストコーナーで何か飲むけ?」

と言いながら身を起こす動きはまだ鈍く、背中の痛みが残っている事は察知出来た。

「 無理しちょし・・」

"小鳥"は安静を求めたが、

「 一日中ここで寝てるだけだから、アタシも気分転換したいし・・」

健康体には計れない要求を断る事は出来ず、

「 よし、ほぃじゃ行くけ?」

「 うん・・」

「 ほら、ゆっくりでいいから、気をつけろし?」

手を掴んでのエスコートなど無かった暮らしが一変、"葵"の動きは心そのものを表している様に弱弱しくなっていた。

「 お昼はちゃんと食べたけ? 」

「 うん・・」

「 夜ご飯は大丈夫け?」

「 うん、今日からは帰って米炊いてみるよ・・」

「 疲れてるだから何か買ってけし・・ 渡したお金はまだあるら?」

「 うん、でももったいねぇからさ、少しでも使わんようにしようと思ってさ・・」

「 あのね、病院代はお母さんが立て替えてくれるって言ってたし、"リー(小鳥)"ちゃんに不自由させるなってお金もくれたから、家事はしないで好きなもん食えし・・ 無くなったらまた渡すから・・」

「 う、うん・・」

"葵"と少しでも長く一緒に居たかった"小鳥"は、

「 そしたら、消灯まで一緒にいれるね?」

"葵"とギリギリまで一緒に過ごそうとしたが、

「 "リー(小鳥)"ちゃん、疲れてるでしょ? 明日も明後日も負担掛けちゃうだから、無理しないで帰ってゆっくり休めし・・」

"葵"は、まるで自分の事よりも"小鳥"を気遣うのだった。

「 そっかぁ、そしたらまた明日来るよ・・」

「 うん、ご飯作ってやれんくてごめんねぇ、ちゃんと買って食べるだよ?」

「 うん・・」

そんな"葵"を見ているうちに、

「 酒とたばこを辞めるくらいなら死んだほうがまし・・」

"葵"の決め台詞を思い出した"小鳥"は、

( 楽しみが奪われちまったら・・ 生きていたいとも望まなくなっちまうんじゃねぇか?)

急に悲しい予感が込み上げて来て、

「 退院したらさ、酒もたばこも好きなだけ飲んでいいからさ、少しだけ辛抱してな?」

「 ふふ、ありがと・・」

思わずニンジンをぶら下げる様な台詞を吐いていた。

会話の端端から"葵"が"小鳥"の事を何より一番に考えていると感じた後の"小鳥"は、

「 いちいち口に出して言わんきゃわからんだけぇ?」

愛の証明をしつこく求めた末の喧嘩の度に、むきになって叫んでいた"葵"が何を言わんとしていたか、だいぶ遅れて理解する事になった。

そして、

" 本性や本音は日常のささいから零れ出ている "

と体感した事で今まで"葵"を咎めてきたいちいちが、心から無様でどうでも良かった事に思えて来るのだった。

( 何とか、生きる気力を"イー(葵)"ちゃんに・・ )

帰宅の車中で、一度はそっぽを向いた神仏に涙ながらに祈っていたのは、それはつまり、骨が曲がり、激痛を伴い、身体の自由が奪われて行くと承知して生き繋いで行く未来を自分に置き換えてみた時、

( 死んでしまいたい・・ )

自分ならそう思うと確信したからであり、そんな状況でも"小鳥"を心配する"葵"に、

( せめて好きな事を何でもさせてあげたい・・ )

そう思ったからだった。

愛する人の存命が危ぶまれて、実感としてシンクロしたこの時になって、比較の原理はいとも容易く価値観を覆していたのである。

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