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小鳥(ことり)

Author:小鳥(ことり)
指差し指されの人生も、独りじゃ出来ない人の興。良も不良も時々に、白でも黒でも無いと知る。「人ではじまり、人に終わる」 ただそれだけの事。

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  • 30-13 事情の作用

「 ささっどうぞどうぞ・・」

と酒を出す"葵"の母親に、

" ペコリ "

首を動かして礼を示した"小鳥"の父親は、

" ゴクゴクゴク・・ "

「 くぅ~~ 」

グラスを逆さにする様に酒を一気に飲み干し、

「 あら~ いい飲みっぷりで・・」

一升瓶の蓋を急いで開けた"葵"の母親は嬉しそうにお酌をして、

「 何だか"リー(小鳥)"ちゃんのお父さんって素敵ねぇ・・」

お世辞にも聞こえる言葉を続けた。

「 ほんとにすみません・・」

それに対して"小鳥"の母親が再び頭を下げると、

「 いえいえ本当に、変にかしこまっていられるよりよっぽど気持ちが良いですよ・・」

その姿は本当に嬉しそうに見えた。

それから数回のお酌を一気に飲み干した"小鳥"の父親は、長距離運転の疲れも手伝ってか、

「 ちょっと寝るだす 」

少しお茶目に言葉を出したかと思うと、

" ゴロン・・ "

そのまま茶の間で大の字になっていびきを立て始めた。

「 本当にすみません・・」

詫びるばかりの"小鳥"の母親に対して、

「 運転して疲れてるだから、どうぞゆっくり寝かせてあげてください・・」

そう言った"葵"の母親は笑顔を絶やさず、再び女達の会話が盛り上がると、あれよあれよと時間は過ぎて行った。

そして、

" ぐ~~ すかすかぴ~~ "

と聞こえていたいびきの音が急に止まったかと思うと、

" ムクッ "

"小鳥"の父親は身を起こし、

「 どれ、帰るか?」

結局、母親が運転する形で"小鳥"の両親が車に乗り込んだのは夕方近くで、

「 ほぃじゃ気を付けて・・」

と見送る"小鳥"に続いて、

「 着いたら連絡下さい・・」

"葵"も声を掛け、

「 それじゃ失礼いたします・・ 何も出来ませんが、どうぞよろしくお願いします・・」

"小鳥"の母親が"葵"の母親に言った言葉を最後にして顔合わせは終了したのだった。

後日、父親があおった酒が、

「 わざわざ山梨まで行ったのに、途中でいなくなるってあんのが?」

まるで聞きたい事だけを聞いて去ってしまった"葵"の父親に対する怒りを沈める為だったと知った"小鳥"は、和やかに流れたかに思えたあの場で、親同士には水面下の攻防があったのだと気付く事になった。

振り返ってみれば、

「 家出をしたら山梨に辿り着いて・・」

「 福島には帰りません・・」

「 親とは縁を切ってあります・・」

"小鳥"がこれまで口に出してきた言葉の数々からは今回の場はとても想像出来るものではなく、"葵"の父親に驚きがあったとしてもおかしくは無かった。

どんな思いで"小鳥"を受け入れたのかを語った"葵"の父親に、

「 うちの子ではありません、好きにして下さい・・」

と切り返した"小鳥"の母親は、"葵"の父親が言わんとする事をすかさず汲み取っていた訳である。

福島から家出をして辿り着いたという"小鳥"を息子の様に思ってくれた"葵"の両親と、調子良く求められても駆け付けてくれた"小鳥"の両親が、この局面で対立する様に向き合った事実は誰の仕業でもなく、

( 全ては俺が蒔いた種なんだなぁ・・ )

自分自身が引き起こしたものだった。

親という同じ立ち位置でありながら、その年齢を比べれば"小鳥"の両親はまだ若く、人生で構築したものを比べてみても生きた年数を無視出来ぬ差があり、結納金を求めた所で早急に出てくる余裕などは無くて当然だった。

それなのに、まるで当人同士の問題でしか無いと捉えて存分に先走ってしまった"小鳥"は、結果として実の親に大恥をかかせてしまったのである。

我が子がとった行動に対して、無いものは無いと開き直ったとしても、無いからにはそれなりに振舞わなければならぬ恥の場に、

( わかっていながら来てくれたんだ・・ )

余所様の娘を息子の妻に迎えるという事に対して、何を注文するでも咎めるでも無く、

「 こんな息子でよかったら・・」

そんな姿勢に終始した母親に対して、"小鳥"はとんでもない親不孝をしてしまったと思うのであった。

そしてまた、

( せめて最後まで一緒に・・ )

という期待も叶わず、馬鹿にされたと怒り、その感情を酒で必死に抑えていた父親に対して、

( 悪いのは俺なんだ・・ )

そう悔やんだ"小鳥"は、自分自身が吐いた言葉の重みを嫌と言う程に思い知るのだった。

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